自己愛性パーソナリティー障害
今も昔も、自己中心的になり、自慢をしたがるのは人間の性ではありますが、真のナルシストはそれを究極のレベルまで引き上げます。余計な自信を持っているだけではなく、他人の気持ちや考えには価値がないと考え、他の人が必要としているものを無視したりします。
しかし、しばしばナルシストと呼ばれる自己陶酔者と精神病である自己愛性パーソナリティー障害者との間には違いがあります。
以下の特性のいくつかを確認できるのであれば、それはナルシストです。それらのほとんどを持ち合わせているのであれば、自己愛性パーソナリティー障害を持っている可能性があります。セラピストはその原因を突き止めることができるでしょう。
兆候
ナルシストという言葉は、ギリシア神話に由来しています。ナルシッサスという名の若い男が、水溜りに映る自分を見て、恋をしてしまいます。
あなたの知り合いにもこんな人はいませんか?その人に対して周囲の人はよく腹を立てていませんか?関係を維持するのは難しくないですか?その人はいつも自分のことを優先して、唯一の「正しい」方法を知っていると思っていますか?自己愛性パーソナリティー障害を持つ人もまた以下のような傾向があります。
・いつも自分自身のことについて考え、自分のことについて多く話す
・周囲の注目と賞賛を求める
・才能と業績を誇張する
・自分が特別だと信じている
・非現実的な目標を設定する
・早く、大きな気分の揺れがある
・他人の気持ちを真剣に受け止めるのに苦労する
・勝つための努力を惜しまない
・限りない成功、お金、権力について幻想を抱く
このような人は、自尊心が高いと思われるかもしれませんが、実際はその反対です。その立派な外面の下には、深刻な不安感があります。他人を嫉妬させたい一方で、しばしば自分自身も嫉妬に満ちています。競争的で、他人の業績に脅かされています。その人間関係はしばしば荒々しく、長続きしません。傷付いた感情の痕跡が見られます。(He leaves a trail of hurt feelings in his wake.)
簡単に傷付きますが、それを見せないようにするか、怒りという形で過度に反応します。批判に耐えることができず、言い訳をして、欠陥や失敗に対して責任を取ろうとしません。他人を容易に動かすことができる、生来のリーダーであると自負しています。人の話を聞かず、じばしば中断します。それは一方通行的で、「やらずぶったくり(all take, no give)」です。
ナルシストになっても、障害にまでならない人もいます。その人は自己陶酔的であり、非常に競争的であるかもしれませんが、日常生活に支障をきたすほどではありません。
ほとんどの人にはナルシストになる素地があり、自分自身が魅力的でカリスマ的でおもしろい人間であると思っています。自信は魅力的です。成功した指導者はしばしば積極的で要求の厳しい人たちでした。
診断
精神障害を確認するための臨床検査はありません。多くの専門家は、どの程度の他人からの注目や権力を欲しているのかなどを測定する40の質問のリストである自己愛性パーソナリティーリスト(Narcissistic Personality Inventory)を使用しています。
パーソナリティー障害は、長期間に渡って深く染み付いた、機能不全の思考や行動、そして他人との人間関係のパターンであり、早ければ8歳になると、子供たちが他人の反応を知るようになる頃にその症状は現れることがあります。自己愛性パーソナリティー障害を持つ人々は、自分自身が精神的問題を抱えている可能性があると認識しない傾向にあるため、検査または治療を受けないことが多いです。
原因
正確な原因は不明ですが、いくつかの説があります。多くの人は、ストレスの対処の仕方や育てられた環境などの様々な要因が関連していると考えています。親が子供を台座に座らせ、終わりのない賞賛のシャワーを浴びせると、ナルシシズムの種が子供に植え付けられるという結果が、最近の研究によって明らかにされています。子育てと支援、そして自尊心を煽ることの間にははっきりとした一線があるのです。
そして、繰り返しになりますが、その反対も事実です。無視されたり虐待された子供は、生存本能のようにほぼ自己中心的になる傾向があります。他の誰もしてくれないため、自分自身で自分に気を配らねばならないと感じています。
治療
治療法はありませんが、セラピーは役に立ちます。その目標は、人の弱い自尊心を強くし、他人に対してより現実的な期待を持たせるということです。
この精神障害を治療する薬はありませんが、うつ病と不安がナルシシズムと関連していることもあり、そのような状態に役立つ薬があります。
ナルシストがアルコールや薬物を乱用するのは、一般的なことでありますが、その中毒に対する治療を受けることも重要です。
子供たちに関しては、ほめすぎる親に自制するように、十分に注意を子供に向けていない親には徐々に改善させるよう、専門家は提案するでしょう。
ナルシストは、(セラピーを通じて)より前向きな他者との関係を学ぶことができますが、それがどれほど重要なフィードバックとなるか、またどれだけ現状を改善させようとしているかに左右されます。