不安、ストレス、そして腹痛

お腹

興奮やストレスは、時に吐き気や嘔吐の原因となることがあります。

「ママ、おなか痛い」

幼少期に、この曖昧な決まり文句を言わない子はいないと言っても過言ではないでしょう。一方で、大人も、全く同じ表現はしないでしょうが、緊張してソワソワしたり、不安に駆られてトイレへ駆け込んだり、吐き気を催したり、冷や汗が出たり、吐きそうになった経験が全くないという人はいないのではないでしょうか?

吐き気を催したり、腹痛を引き起こす可能性のある原因はいくつもあります。ウイルスや細菌は、吐き気や嘔吐の代表的な身体的原因です。しかし、私たちが抱く感情、とりわけ不安やストレス、興奮といった精神面も、原因となることがあるのです。以下に、いくつか例を挙げます。

・社会不安
これは、様々な状況でみられます。例えば、知らない人がたくさんいるパーティーに出席しないといけない場面や、学校や新しい職場へ初めて行く日などがこれに当てはまるでしょう。

・パフォーマンス不安
これは、会議で大事なプレゼンをしなければならない場合や、大事な試合の準備をする場合が当てはまります。

・ストレスや恐怖
家のローンの支払いに不安を感じたり、海外の大学への進学、学校でのいじめなどがこれに当てはまります。

・過度の興奮状態
これは、お腹のトラブルを引き起こす精神的な原因の中でも、「良い」ものです。例えば、結婚式、卒業式、待ち遠しくて仕方がない休暇などがあります。

感情が私たちの体に与える影響

なぜ、気持ちが体調に影響することがあるのでしょうか?

「私たちの生活は、怒りや恥ずかしさ、恐怖心や喜びまで、あらゆる感情で溢れています」と、ニューヨーク市立大学のHunter Collegeで心理学部の准教授をつとめるTracy A. Dennis博士は言います。

「こうした感情一つ一つが、それぞれ複雑な心理的反応を生み出します。例えば、怒りを覚えると、鼓動が早くなり、アドレナリンが分泌し、血圧が上がり、激怒するのです」と彼女は続けます。

「このような、心理的、そして神経内分泌の変化と、それに付随する感情は、消化器系を含む、私たちの体のあらゆる部位に影響を及ぼします。こうした身体的反応は、突然始まったり終わったりすることもありますし、体に非常に強い負荷をかけている場合もあります」

Dennisによると、感情の激しさによって、体が一生懸命に働きすぎてしまい、その結果として、腹痛や吐き気、嘔吐、下痢などの急な胃腸障害を引き起こすのだといいます。(これが長期間続くと、同じような神経内分泌反応が高血圧や循環器疾患のリスクを高めてしまう恐れがあります。)

ストレス、不安、嘔吐、そして腹痛…何かできることはないの?

もしも、お子さんが頻繁に腹痛や吐き気に苦しんでいる場合は、まずは身体的な原因がないかどうか、医師に診てもらって下さい。たいていの場合、細菌、ウイルス、胃酸の逆流、乳糖不耐症、便秘といった身体的な原因が、幼い子供の腹痛の背景にあります。

「幼い子供がお腹の調子について不満を言っている場合、それがストレスによるものだとすると、特に理解してあげられないことが多いです」と、Southern California School of Medicine大学で小児科医および小児科学の臨床学准教授をつとめるChris Tolcher医学博士は言います。

身体的な原因が除外されたら、ストレスを感じる状況において、お子さんがどのように反応するのか、注意して見てあげてください。

「精神が身体に影響を及ぼすことは、周知の事実です。逆も然りです。この直感的とも言える考えを証明するべく、科学的な分析もやっとそれに追いつこうとしているのです」とDennisは言います。

セラピーは、子供にも大人にも有効です。しかし、たいていはセラピストの助けは必要ありません。感情を自分で効果的に制御できるようになるということも、有効です。

「精神的に厳しい場面に遭遇したら、感情的な反応に至る前に、その状況において肯定的な要素を探せるようになるかどうかが、鍵となるでしょう」とDennisは言います。

例えば、あなたやあなたのお子さんは、就職の面接や学校の試験の前になると、失敗してしまうのではないかという心配や恐怖に駆られることが多いとしましょう。このような恐怖は、否定的な感情、ストレス、身体的な苦痛などを次々と引き起こしてしまいます。そこで、この状況をもっと肯定的な観点で見つめてみましょう。見解や熱意を共有する機会になりますし、学びもあるはずです。

「ほかのあらゆることがそうであるように、これにも訓練が必要です」とDennisは言います。

体にかかる負荷を助け、精神を落ち着かせるためには、こうした方法はかなり有効であると言えるでしょう。

ストレス、不安、過度の興奮状態の自己管理

・深呼吸をしましょう。目を閉じて、息を深く吸って、長く吐き出します。なるべくゆっくりと息を吐き出すようにしましょう。必要に応じて、これを繰り返します。
・軽い運動をしましょう。ウォーキングやストレッチは、ストレスの溜まった体や過度の興奮状態にある脳を落ち着かせることができます。
・息抜きをしましょう。テレビをみたり、ガーデニングをしたり、ペットと遊んだり、友達と出かけたりするなど、自分が楽しいと思えることをして気を紛らせましょう。
・良い想像をしましょう。恐怖に直面し、それに打ち勝つ自分をイメージしてみましょう。たとえば、ミーティングのプレゼンが成功したという想像をしてみましょう。
・助けを借りましょう。心の許せる友人や家族に話を聞いてもらいましょう。
・計画をしましょう。問題にどのように対処するべきかを考えるだけで、気分を落ち着かせられることがあります。
・健康な食生活を送りましょう。お酒は、ストレスや不安を悪化させるだけです。また、過食は、ただでさえ張り詰めた状況にあるところへ、さらに罪悪感や吐き気を加えてしまいます。
・休息をとりましょう。ストレスや不安、ジェットコースターに乗っているかのような感情の起伏の激しさなどのどのような精神的な状況であっても、休んで、心を充電する時間は必要であるという事実は同じです。物思いに耽りましょう。昼寝をしましょう。そして、夜もぐっすり寝ることを心がけましょう。

時には、腹痛や吐き気、また、ストレスや不安、興奮などに起因するその他の身体的な症状を緩和するには、もう少し援助が必要な場合があります。以下に、専門家による助言を紹介します。

・水分補給を怠らないようにしましょう。もしストレスや過度の興奮によって、あなたもしくはお子さんが嘔吐をしてしまったら、十分な水分補給は特に大切になってきます。しかし、お腹に何かを入れるのは、嘔吐してから30~60分ほど待ったほうが良いです、とCedars Sinai Medical Centerの担当医であり、小児科医であるScott Cohen医学博士は話します。その後、時間をかけてゆっくりと、一度に小さじ一杯ずつくらいの水分を流し込むイメージで補給します。固形物は、最後に嘔吐してから6時間以上経つまでは、避けるようにしてください。

・食べ物や飲み物については、ペパーミントティーやショウガが、緊張からくる腹痛や吐き気を和らげるということはよく言われています。しかし、ショウガは子供にとってはあまり食べやすいものではありません。「ジンジャーエールには、ショウガという意味が含まれていますが、実際は本物のショウガからできているものは少なく、飲むキャンディーのようなものなので、あまりおすすめできません」とTolcherは話します。あなたやお子さんの腹痛を和らげるようなものは他にたくさんあります。スープや天然発泡ミネラルウォーター、クラッカー、トーストや、ほかにもお腹にやさしい食べ物はあります。

・薬は、効くものもありますが、効かないものもあります。嘔吐や、お腹の弱い人がよく引き起こす、吐き気や下痢、胃酸過多といった複数の症状に効く市販の薬はたくさんあります。症状に最も効く薬がどれかを知るためには、医師に相談してみてください。もしも腹痛をイブプロフェン配合の薬によって和らげたいと考えているなら、やめたほうがよいです。イブプロフェンは、通常は腹痛には効きません。時には、腹痛を悪化させてしまう場合があります。

・においの強いものは避けましょう。胃がムカムカしたり、吐きそうな感じがする場合は、料理をしているときのにおいや、タバコのにおい、香水などの強いにおいは避けるようにしましょう。

・生活習慣を変えてみましょう。子供や大人の中には、ストレスに起因する症状の一つとして便秘が挙げられます。「そのため、食生活を変えてみたり、食物繊維のサプリや便秘薬を飲んだりするのです」とTolcherは言います。もしも下痢を引き起こしている場合は、食物繊維のサプリやプロバイオティクス細菌(ヨーグルトや一部のサプリに配合されている、体に良いとされる細菌)がストレスからくる腹痛を和らげてくれる場合があります。

体と精神のバランスを取り戻すための方法には、そんなに難しいものはありません。もしも不安やストレスでいっぱいになり、日常的にそれらが原因の身体的な苦痛に苦しめられている場合は、一人で抱え込まず、助けを求めるようにしましょう。

関連記事一覧