胃不全まひ

お腹

胃不全まひは、1型2型糖尿病の患者両方に影響を与える疾患で、胃の内容物が空になるまでに長い時間を胃が要する(胃排出遅延)ものです。迷走神経は、消化管を通る食べ物の動きを調整します。迷走神経が傷ついたり、働きが止まってしまうと、胃と腸の筋肉が通常通りに動かなくなり、食べ物の動きが遅くなったり止まったりします。

他の神経障害疾患と同様、血糖値が長期間高い場合に、糖尿病は迷走神経を傷つけることがあります。高血糖値は神経内の化学物質の変化を起し、神経に酸素や栄養を届けている血管に損傷を与える可能性があります。

どのような症状がでますか?

胃不全まひの兆候と症状には以下のようなものがあります。
・胸焼け
・吐き気
・未消化の食べ物の嘔吐
・食事中、すぐに満腹感を感じる
・減量
・腹部膨満
・不安定な血糖値
・食欲がなくなる
・胃食道逆流
・胃壁のけいれん

こうした症状は、人によって軽度のものもあれば重度のものもあります。

合併症には何がありますか?

胃不全まひは血糖値の管理がさらに困難になることで、糖尿病をさらに悪化させることがあります。胃の中に長時間留まっていた食べ物がやっと小腸に入り込み、吸収されると血糖値が上がります。

食べ物が長時間胃に留まると、食べ物が発酵して、最近繁殖のような問題の原因となる可能性があります。食べ物は胃石と呼ばれる固体に固まることがあり、これが吐き気、嘔吐、胃の中の閉塞症の原因となることもあります。食べ物が小腸に流れる管を塞いでしまう場合、胃石は危険なものになります。

どのように診断が行われますか?

胃不全まひの診断は、以下の検査のうちの一つもしくは二つ以上を行って確定されます。

・バリウムX線検査
12時間絶食した後、レントゲン検査で胃を見えやすくするためのバリウム造影剤を飲むことで、胃の内部を覆って行います。通常、12時間の絶食後、胃は空になっているはずです。もし、レントゲン検査によって、胃の中に食べ物が残ってることがわかった場合、胃不全まひが原因かもしれません。もし、レントゲン検査で胃が空になっていても、胃が空になるまでに時間がかかっているのではないかと疑う場合、別の日にもう一度検査を行います。いずれかの日の検査で、胃不全まひの患者が食べ物を正常に消化している場合は、正常とした検査結果が誤っていた可能性があります。糖尿病である場合は、医師は絶食について特別な指示を与えるかもしれません。

・バリウム食
バリウムを含んでいる食事を摂ることで、医師が患者の胃が食事を消化することを観察することができます。バリウム食が消化され胃から食べ物がなくなるのにどれぐらい時間がかかるのかということで、医師は患者の胃がどれだけよく動いているのかについてわかります。この検査により、バリウム溶液を使ったX線検査では現れなかった胃の動きの問題を理解することに役立ちます。実際、糖尿病に関連した胃不全まひの患者は、液体は正常に消化できることがあるため、バリウム食による検査は非常に役立つものとなります。

・放射性同位体(アイソトープ)胃内容排出機能検査
検査で写し出される、わずかな放射性物質である放射性同位体(アイソトープ)を含む食べ物を患者は摂取します。放射性同位体からの放射能の量はわずかで、危険なものではありません。食後、放射性同位体を検知する機械の上に横になることで、胃の中の食べ物の画像が示され、どれだけの時間で胃から排出されていくかを確認することができます。胃不全まひと診断されるのは、食後2時間経っても食べ物の半分以上が胃に残っている場合です。

・胃内圧検査
この検査では、胃の内部の電気的活動、筋肉活動を測定します。医師は喉から医師まで細いチューブを通します。液体や固体の食べ物を消化する時の胃の電気的活動と筋肉活動を測定することができるワイヤーがチューブには入っています。この測定により、胃がどのように動いているのか、また消化に遅れがあるかどうかが示されます。

・血液検査
医師は臨床検査を行い、血球数、化学物質、電解質の値を検査することがあります。

胃不全の原因が糖尿病以外のものであるか排除するために、医師は上部消化管内視鏡検査や超音波検査を行うことがあるかもしれません。

・上部消化管内視鏡検査
鎮痛剤を取った後、内視鏡と呼ばれる、長く細いチューブを口から食道にそって胃の中まで入れます。内視鏡を通して、胃内壁を見ることができるため、何か異常がないか確認することができます。

・超音波検査
胆嚢やすい臓の病気が疾患の原因である可能性を排除するため、超音波検査を行うことがあり、無害な音波を使い、胆嚢やすい臓の形や輪郭を確認します。

治療はどのように行われるのでしょうか?

糖尿病に関連した胃不全まひを治療するという目的で最も重要なことは、血糖値をできる限り管理することです。治療は、インスリン、内服薬、食べ物の内容と時間の変更などを含みます。重症の場合、栄養管、静脈内栄養補給を行うこともあります。

血糖値管理のためのインスリン

胃不全まひの場合、食べ物の消化がゆっくりとなり、どれぐらい時間がかかっているのかわかりません。血糖値の管理を行うために、以下のことを試してみる必要性があるかもしれません。

・インスリンの投与回数を増やす
・インスリンの投与を食前ではなく食後にする
・血糖値の検査を食後頻繁に行い、必要な時はいつでもインスリンを投与する

患者のニーズ毎に基づいて、医師は特別な指示を与える場合があります。

薬剤

胃不全まひの治療に使われる薬剤はいくつかあります。さらに効果的な治療を行うため、医師は異なった薬や薬の組み合わせを行うことがあるかもしれません。

食事や食べ物の変更

食生活の変更は、胃不全まひの症状を管理することに役立ちます。医師もしくは栄養士は、症状を改善するための特定のアドバイスを行う場合があります。一度に食べる量を少なくすることは効果がある場合があります。また、ゆっくり食べること、食後は体を横にせず、散歩をすると効果的です。

医師は高脂肪食品や高食物繊維食品は避けるようにアドバイスする可能性があります。高脂肪食品は消化に時間がかかるため、消化が遅いという症状を強くする可能性があります。高食物繊維食品は、消化が難しく、消化されなかった食物繊維が胃石(消化管に消化されなかった食べ物の固形が消化管に溜まり、詰まりの原因となる)を形成する可能性があります。

栄養管、静脈内栄養補給

他に有効な治療法がない場合、外科手術により栄養管を挿入する必要があることがあります。経皮空腸瘻チューブと呼ばれるものが、腹部の肌から小腸に挿入されます。栄養管により、小腸に栄養を直接入れることができ、胃を回避することができます。特別な液体食をこのチューブから摂取します。経皮空腸瘻チューブは、胃不全まひにより栄養を摂ることができず、血糖値を管理するために必要な薬が血流に届かなくなっている場合には特に有効な方法です。

問題の原因となる胃を避け、小腸に直接栄養や薬を届けることで、確実に食べ物が消化され、血中に即効で薬が届けられるようになります。経皮空腸瘻チューブは、胃不全まひが深刻な時に必要な場合にのみ、一時的に使われるものです。

念頭にいれておく必要があることは、治療の多くは胃不全まひを治すものではないということです。胃不全まひは通常慢性病です。治療は胃不全まひを管理することには役立ちますので、可能な限り健康的で快適でいることができます。

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