心的外傷後ストレス障害(PTSD)とは?

症状

心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、衝撃的で、恐ろしい、あるいは危険な出来事の後に人によっては進行する深刻な精神状況です。こうした出来事はトラウマと呼ばれます。

トラウマの後、恐れ、不安、悲しみに苦しむことがよくあります。記憶がめちゃめちゃになったり、睡眠に困難を感じるかもしれません。ほとんどの人々は時間が経つと共に症状が良くなります。しかし、PTSDの患者は、こうした思考や感覚がなくならないのです。これは何ヶ月、何年も続き、悪化する恐れさえあります。

PTSDは患者の人間関係や、仕事などの日常生活に支障をきたします。患者の体の健康にも甚大な影響を与えます。しかし、治療をすれば、充実した生活を送ることができるのです。

どのようにPTSDは起こるのか?

トラウマを経験する間、体は脅威に対し「闘争・逃走」モードに入ることで対応します。アドレナリンやノルアドレナリンといったストレスホルモンが分泌され、エネルギーを漲らせます。心拍は早くなります。脳も短期記憶の整理などの普段の仕事を一旦休みます。

PTSDは脳を警戒モードから戻れなくしてしまうのです。もはや危険な状態に無い時であっても、厳戒態勢のままになります。体はストレス信号を送り続け、それがPTSDの症状につながるのです。脳の恐怖と感情を司る部位(扁桃体)が、PTSDの人々ではより活発であることが実験で示されています。

時間をかけて、PTSDは患者の脳を変えていきます。記憶を司る領域(海馬)は収縮します。専門家が早期に治療を求めることを勧める理由の1つはこれなのです。

PTSDの影響はどのようなものか?

PTSDの影響は様々です。心をかき乱すようなフラッシュバック、睡眠障害、感情的な麻痺、怒りの爆発、そして罪悪感といったものを含むかもしれません。その出来事を思い起こさせるような物事を避けたり、楽しんでいることへの興味も失ってしまう可能性があります。

症状は普通トラウマから3ヶ月以内に始まります。しかし、何年も経たないと表出しない場合もあるでしょう。症状は最低でも1ヶ月は続きます。治療しないと、PTSDを何年も、あるいは残りの人生ずっと抱え込むことになります。気分が良くなったり悪くなったりすることが続きます。例えば、テレビでの災害に関する報道が患者自身の経験した災害にまつわる全般的な記憶を呼び覚ますかもしれないのです。

PTSDは人生を妨げます。この病気は他人を信頼したり、コミュニケーションをとったり、また問題を解決したりすることを困難にします。友人、家族、そして同僚との関係にも支障をきたす可能性があります。体の健康にも影響を及ぼします。実際、研究ではPTSDは心臓病と消化器疾患のリスクを上昇させることが明らかにされています。

PTSDになる人

PTSDが最初に記述されたのは、退役軍人に関するものでした。PTSDはかつて「シェル・ショック」や「戦争神経症」と呼ばれました。しかしPTSDは子供も含め、誰でも、何歳でも起こる可能性があります。実際、アメリカ人の8%は人生のどこかで、この障害になるでしょう。

女性のPTSDのリスクは2倍です。それは、女性の方が性的暴行を経験しやすいからです。また、女性は男性よりも、自分達の状態をトラウマ的出来事のせいにします。

女性の約50%と男性の約60%は人生のどこかで、感情的トラウマを経験するでしょう。しかし全ての人がPTSDになるわけではありません。以下の要因はリスクを上げます。

・子供時代の虐待のような、トラウマのある過去の経験
・うつや不安神経症、薬物乱用など、別の精神衛生問題を抱えている
・PTSDやうつといった、精神衛生問題を、親などの近しい家族構成員が患っている
・心的外傷ができるような出来事に接触するかもしれない仕事をする(軍事、あるいは救急医療)
・友人や家族からの社会的支援の不足

PTSDと共に生きる

この病気の治療法はありません。しかしPTSDはセラピーによって上手く治療することができるのです。医師は抗うつ剤などの薬も処方してくれるかもしれません。適切な治療をすれば、PTSDの症状を止めることができる人もいるでしょう。他の人たちも、症状を和らげることができるかもしれません。

PTSDを患っていると思ったら、助けを求めることが大事です。それ無しでは、状況は普通改善しません。

関連記事一覧