性同一性障害ー治療

治療方法

性同一性障害の治療は、この疾患の人が、彼らが望む道で、つまり、彼らが望む性アイデンティティーで生きるのを手助けすることを目的としています。

これが意味するところは、人によって、また、子ども、若者、大人にとってもそれぞれ異なります。あなたのための専門者のケアチームが、あなたの望みにかなうオーダーメイドの治療プランに沿って治療するのに協力してくれるでしょう。

子どもと若者の治療

評価の結果によって、性同一障害だと考えられる子どもや若者の治療オプションには、以下のようなものがあります。

・家族療法
・子どものための個別の心理療法
・両親のサポート、または、カウンセリング
・若者と両親のためのグループワーク
・性に関するアイデンティティーの形成を観察するための定期的な調査
・ホルモン療法(下記参照)

この年代では、治療として、医療や手術ではなく、心理療法が行われることが多いです。その理由は、性同一性障害だと考えられる子どもの大多数が、思春期に達するまでは、その状態にならないからです。精神的サポートにより、若者と家族の間で、それぞれの考えを議論できる機会ができ、より思い切った治療へと早まる前に、この障害による精神的苦痛を対処するための支援を得ることができます。

ホルモン療法

子どもが性同一性障害で、思春期に到達した場合、性腺刺激ホルモン放出ホルモンアナログGnRHaによって治療できるかもしれません。これは、生まれつき体内で作られるホルモンを抑制する合成(人工)ホルモンです。

思春期に発生する変化は、ホルモンによって引き起こされている場合があります。例えば、少年の精巣で作られる、テストステロンホルモンは、男性器の成長を促進します。

成人の治療

性同一性障害の大人は、成人の性同一性障害の専門家のところに行くのがいいでしょう。子どもや若者の性同一性障害の専門家と同様、このような病院でも、以下のような、進行型の評価、治療、支援や助言を受けられます。

・カウンセリングなどのメンタルヘルス支援
・(性別を越えた)ホルモン治療(cross-sex hormone treatment )(下記参照)
・言語聴覚療法ー声を変えるため、そして、自身の性アイデンティティーに一般的な声にするため
・体毛除去処置。特に顔の体毛。
・相互支援グループ。性同一性障害のほかの人と会うため。
・家族のための親族支援グループ

病院から支援と助言を受けるだけで、自身の性アイデンティティーを快く受け入られる人もいます。違う性に完全に転換するなど、より広範囲の処置が必要な人もいます。どれだけ治療を行うかは、完全にあなた次第です。

ホルモン療法

成人のホルモン療法とは、自身の望む性のホルモンを摂取することです。

・FtM(生物学的性別は女性、性の自己意識は男性, female to male)の場合は、テストステロン(男性化させるホルモン)を摂取します。
・MtF(生物学的性別は男性、性の自己意識は女性, male to female)の場合は、エストロゲン(女性化させるホルモン)を摂取します。

ホルモン療法の目的は、外見、思考の両方に関して、自身をより快く受け入れられるようにすることです。これらのホルモンは、自身の性アイデンティティーに沿って、体をより女性らしく、もしくは男性らしく変化させるプロセスを開始させます。たとえ性別適合手術を行った場合でも、このプロセスは、通常、明確に進行するわけではありません。

ホルモン療法を行うことで、性同一性障害とともに生きていけるかもしれません。上記のようなホルモンにより、気分が晴れ、自身の望む性になったり、手術をしたりする必要がなくなるかもしれません。

リスク

長期の男性化、もしくは女性化ホルモン治療の潜在的リスクに関しては、不確実性があります。治療を始める前に、潜在的リスクと定期的な観察の重要さを知りましょう。

以下では、ホルモン療法に最も密接に関連する潜在的な問題の一部を紹介します。

・血栓
・胆石
・体重の増加
・痤瘡
・頭皮から髪がなくなる
・睡眠時無呼吸ー睡眠時に呼吸が妨げられる疾患

さらに、ホルモン療法により、FtM、MtF両者とも子どもができにくい体になり、最終的に、完全に子どもができなくなります。治療を開始する前に、専門家は、子どもができにくくなるという作用について話し合わなければならず、将来子どもが欲しくなった場合のために、卵子や精子を保管する(配偶子バンクとして知られています)という選択肢を提案されるかもしれません。

ホルモンの摂取を中止したら、子どもをつくる能力が通常に戻るという保証はありません。

観察

これらのホルモンを摂取する間、定期的に検査を受ける必要があります。潜在的な健康問題のサインを念入りに調べるため、また、ホルモン治療の効果が出ているか確かめるために、検査されるでしょう。

ホルモン治療の効果が出ていないと感じる場合、治療を受けている医療の専門家に相談しましょう。必要に応じて、ホルモンの摂取を中止する場合があります。(しかし、FtMの場合、低い声や、MtFの場合、乳房の成長など、不可逆な変化もあります。)

手術

以下で議論されるのが、最も一般的な選択肢ですが、どの程度まで実施可能なのか、診察の際に、ケアチームのメンバーや外科医に相談しましょう。

FtMの手術

FtMの手術には、以下のようなものがあります。

・両乳房の乳腺切除術(乳房の除去)
・子宮摘出手術(子宮の除去)
・卵管卵巣摘出術(卵管と卵巣の除去)
・陰茎形成術(陰茎の形成)
・陰嚢形成(陰嚢の形成)と精巣の移植
・陰茎の移植

phalloplastyという陰茎形成術では、陰茎を形成するために、現存する膣組織と、前腕内側、または、腹壁下部の皮膚を用います。metoidioplasty という陰茎形成術では、ホルモン療法によって大きくなった陰核から陰茎を形成します。

このタイプの手術の目的は、正常に機能する陰茎を形成することで、これにより、立って用を足せるようになり、性感を維持できます。このためには、通常、複数回、手術を行わなければなりません。

MtFの手術

MtFの手術には、以下のようなものがあります。

・精巣摘除術(精巣の除去)
・陰茎切断(陰茎の除去)
・膣形成術(膣の形成)
・陰門形成術(陰門の形成)
・陰核形成術(感覚を持つ陰核の形成)
・乳房の移植
・顔の女性化手術(顔を女性らしくする手術)

膣は、通常、陰茎の皮膚から形成され、陰嚢(陰茎を支える袋)の組織は、陰唇の形成に用いられます。尿道(尿の管)は短くされ、別の場所に移植されます。ホルモン療法によって、陰茎と陰嚢が顕著に小さくなった場合、膣形成術の際に、腸の一部が用いられることがあります。

このタイプの手術の目的は、許容範囲内の見た目で、性感を維持する、正常に機能する膣を形成することです。

MtFの中には、医療上の理由から、膣形成術を全て行うことができない人や、機能する膣を持ちたくない人もいるでしょう。そのような場合、美容の陰門形成術や、陰核形成術、もしくは、睾丸と陰茎の除去も選択肢にあります。

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