前頭側頭型認知症(ピック病)
概要
前頭側頭型認知症(FTD)は、65歳未満の人々における、認知症の最も一般的なタイプの1つです。脳の前頭部および側頭部における神経細胞(ニューロン)の進行性喪失、または収縮が原因で発症します。脳のこれらの領域は、人格、意思決定、言語、社会行動などの「実行機能」を司っています。
記憶喪失が大きな症状であるアルツハイマー病とは異なり、FTDの症状の殆どは、社会秩序を乱す行為や言葉遣いに現われます。 FTDを持つ人は、記憶における重要な機能(日々の出来事を覚えておいたり、空間と時間に順応すること)は、保持し続けます。
原因
FTDのほとんどの症例は散発的であり、現段階では遺伝性は認められていません。
しかし、FTD患者の約40%は、少なくとも血縁者の1人以上に、パーキンソン病またはアルツハイマー病のような神経変性疾患の経験者がいるとされています。
遺伝性と散発性の両方のFTDにおいて、同じ症状が見られるため、家族にFTDや認知症のような、関連疾患を他の家族が多いほど、遺伝的な要素が考えらるとされています。
症状
FTDの症状は、主に以下の2つです。
・行動と人格
通常、記憶は比較的残ります。
・言語、発話、記憶の障害
人格や行動の変化に関する症状には、以下があります。
・衝動的な行動
・行動が散漫
・無愛想にになる
・不適切な社会的行動
・自分自身や他人の行動に対して無関心になる
・性行為への関心の高まり
・食糧嗜好の変化
・興奮したり、逆に鈍感になったりする
・自分の衛生管理に怠慢になる
・反復的、または強迫的な行動
・モチベーションやエネルギーの低下
・運動能力の変化
2つ目の症状である言語障害としては、言語の表現力の低下や、言葉の意味の理解ができなくなるなど、があります。
診断
FTDは徐々に発症し、幅広い症状がみられるため、パーキンソン病やアルツハイマー病のような、別の神経学的疾患として最初に誤診されることが多いです。老人病専門医、精神医学者または神経科医は、認知および行動の変化を診断してもらうために、最も適しています。
専門医は、病歴を確認したり、詳細な身体的検査や検査を行い、また可能であれば血液検査を行い、様々な画像技術を利用して、脳の血流の減少や収縮(萎縮)の程度を判断します。
脳の検査には、核磁気共鳴イメージング(MRI)、陽電子放射断層撮影(PET)、単一光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)などが用いられます。また、認知障害の性質を定義するため、心理テストが行われることもあります。
FTDや他の神経変性疾患の家族歴がある場合は、医師やカウンセラーに、臨床的遺伝子検査について問い合わせることもできます。これらの専門的なサービスの提供することについて、認定を受けた臨床検査機関が、FTDを引き起こすことが知られている遺伝子の変化について、血液からDNAを分析します。
遺伝子検査は、内容によって費用が異なるため、あなたの保険でカバーできるかどうか尋ねてください。臨床検査室では、遺伝子検査結果が分かるまで2週間ですむ場合もあれば、または数ヶ月かかる事もあります。
他の家族のリスクを評価する
すでにFTDと診断されている場合、遺伝子検査をすることで、他の家族のFTDのリスクを特定するのに役立ちます。あなたが遺伝について心配なようであれば、米国前頭側頭変性症協会(AFTD)は、以下の重要なステップを推奨しています。
•神経学者/老人病の専門医としっかり話し合、知識をつける
•家族歴について、他の家族に聞く。この問題について話したらない親類がいるかもしれませんが、FTDや関連疾患に罹患した家族の、早期症状や発症した年齢を知ることが重要です。
•成人の神経学的状態の遺伝学的な経験を持つカウンセラーや、他の医療専門家に紹介してもらうよう、医師に依頼する。
治療
FTDの原因は不明であるため、予防、治癒、また進行を遅らせることができないとされています。 AFTDによれば、薬で症状をコントロールするのは難しいですが、多くの症状に対処することが、行動療法の戦略と併用すること、投薬にとって不可欠だとされています。
AFTDは、行動障害のあるFTD患者は、障害に特化した専門機関に紹介されるべきであると推奨しています。
他の疾患を治療するために使用されるいくつかの薬がFTD患者に有害である可能性があるため、正確なFTD診断を得ることが重要です。
FTD患者によく見られる不適切な行動や、判断力の低下などに効果のある薬はありませんが、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などのいくつかの薬は、攻撃性、無関心、不安、興奮、うつなどのFTD症状に効果的です。
アルツハイマー病を治療するために使用される薬(CHEI)は効果がなく、むしろ害を及ぼす可能性があるため、避けるのが最善です。
予防
FTDを防止することはできませんが、世界中のさまざまな組織が進行中の研究がたくさんあります。
結果
悲しいことに、FTDは着実に、そしてしばしば急速に進行するので、結果は良くないです。2年以下で進行する人もいれば、10年以上にかかる人もいます。
言語や行動への影響が進行することで、職業的または社会的機能の著しい障害を引き起こします。 FTD患者のなかには、最終的には自宅や、医療施設で24時間ケアと監督が必要になる人もいます。
医者の診察を受けるタイミング
50歳から60歳の年齢で、次のいずれかに気付いた場合は、医師に相談してください:
・言語の損失
身近な日常的な物に名前を付ける、特定のものである可能性があります。
・歩行困難
・ 筋力低下
・ 他の人があなたの行動の原因不明の変化に気づいた場合(他人に無関心になるなど)。