正常なテストステロンとエストロゲンの値とは

男性だけにテストステロンがあるわけではないことは驚くべきことかもしれません。テストステロンは、アンドロゲンと呼ばれる男性ホルモンの部類に属するものです。しかし、女性にもテストステロンはあります。

卵巣はテストステロンとエストロゲンの両方を産生します。卵巣と副腎により、ごく少量のテストステロンが血中に放出されます。卵巣で産生されることに加えて、エストロゲンは体の脂肪細胞からも産生されます。こうした性ホルモンは、生殖組織の成長、維持、修復に関連しています。しかしそれだけではありません。性ホルモンは他の体細胞や骨量にも影響します。

ホルモンとは何でしょうか?

ホルモンとは化学物質です。一つの組織から分泌され、体内の別の組織に影響を与えるため、体液をつたって運ばれます。要するに、ホルモンとは「化学伝達物質」です。多くのホルモンは、特に成長や行動に影響を与えるため、男性にも女性にも重要なものです。

ホルモンの値と量は毎日変わります。性ホルモンであるエストロゲンとテストステロンが、1時間ごと、分ごとに変わる脈拍によって放出されます。ホルモンの放出は、夜と昼の間や、生理周期の中の期ごとに変わります。

エストロゲンとは何でしょうか?

エストロゲンとは、エストリオール、エストラジオール、エストロンの三種類を含む、ホルモンのことです。

エストリオールはプラセンタから作られています。妊娠中に産生されます。

エストラジオールは女性の出産において、主要な性ホルモンです。卵胞から形成されます。エストラジオールは女性的特徴や性機能に関連しているものです。また、エストラジオールは女性の骨の健康にとって大事なものです。エストラジオールは、子宮内膜症、子宮筋腫、女性のがんを含む、婦人科的疾患の一因となることがあります。

エストロンは、体中に広がるものです。閉経後に主にみられるエストロゲンです。

なぜエストロゲンの値が下がるのでしょうか?

なぜエストロゲンの値が下がるのかについては、以下の内容も含み、多くの理由があります。
・性腺機能低下症
・下垂体機能低下症
・妊娠の失敗(エストリオール)
・更年期と閉経(エストラジオール)
・多嚢胞性卵巣症候群
・拒食症(摂食障害)
・過激な運動やトレーニング

エストロゲンを遮断する、クロミフェンを含む薬剤は、エストロゲンの値が低いと体に思わせるというごまかしを行います。出産後すぐ後や母乳育児をしている間、女性はエストロゲンの値が低くなります。

なぜアスリートはエストロゲンの値が低くなる危険性があるのか?

体脂肪が低すぎる女性は、十分な量の性ホルモンを産生することができないことがあります。アスリートやモデル、体操選手などの女性には問題になることがあります。摂食障害のある女性にも問題となることがあります。こうした女性は無月経症候群として知られる、生理が止まるという症状になることがあります。閉経後の高齢の女性が一般的にかかる、骨粗しょう症や骨折やその他の病気になることもあります。

閉経するとエストロゲンの値も低くなりますか?

はい、閉経時にエストロゲンの値は低くなります。これは全ての女性に40-55歳に起こる自然な変遷です。エストロゲンの減少は、卵巣を取り除いた女性、外科的閉経を行った女性では若くても起こることがあります。

更年期とは閉経前の移行期間を言います。この時期から、エストロゲンの値は自然に下がり始めます。他の生理的変化も始まります。更年期の女性は他の閉経症状とともに体重の増加を経験します。他の症状とは、例えば、月経周期が不定期になったり、体のほてりや腟の乾燥などです。

平均して、閉経は51歳から始まります。閉経が始まると、女性の体はエストロゲンとプロゲステロンの産生が少なくなります。閉経時のエストロゲンの減少は、次のような不快な症状の原因となります。
・体のほてり
・寝汗
・腟の乾燥やかゆみ
・性欲の減少

怒りっぽくなる人もいます。これはエストロゲンの減少に関係があるかもしれませんし、ないかもしれません。エストロゲンのレベルが下がることは、女性の心臓疾患、脳卒中、骨粗しょう症や骨折などのリスクを上げる可能性があります。

エストロゲンの値はなぜ上昇するのでしょうか?

思春期の間、エストロゲンの値が上がることは正常なことです。このホルモンにより女性らしい体に変わっていきます。例えば、胸が発達し、体のカーブがはっきりし、お尻が大きくなり、性器や脇の下に毛が生えてきます。

加えて、肥満の女性ではエストロゲンの値が高いことがみられます。健康的な妊娠の間、エストロゲンの値は高くなり、卵巣腫瘍、精巣腫瘍、副腎腫瘍などの場合にもエストロゲン値が高くみられることがあります。

ステロイド薬剤、アンピシリン、エストロゲン含有薬剤、フェノチアジン、テトラサイクリンなどの薬剤はエストロゲン値を上昇させることがあります。

テストステロン値が上昇または下降すると何が起こるのでしょうか?

体がテストステロンを産生しすぎると、生理不順になったりなくなったりすることがあります。平均的な女性と比較して、体毛が濃くなります。テストステロン値が高い女性は前頭部脱毛になることがあります。他に出る影響としては、ニキビ、陰核肥大、筋肉量の増加、声が低くなる、などがあります。

テストステロン値が高いと、不妊症の原因となったり、多嚢胞性卵巣症候群がよくみられたりします。多嚢胞性卵巣症候群は、内分泌疾患で、妊娠することが難しい出産適齢期の女性に見られる症状です。多嚢胞性卵巣症候群の女性の症状は、テストステロン値が高い場合に出る症状と似ています。次のような症状です。

・肥満
・リンゴ型体型
・体毛が濃くなる、薄くなる
・ニキビ
・生理不順

多嚢胞性卵巣症候群は、次のような症状と関連性があります。

・血中男性ホルモン値が高い
・インスリン抵抗性
・炭水化物不耐症(体重が増えやすくなる症状)
・HDLコレステロール(善玉コレステロール)値が低い
・トリグリセリド値が上昇する
・LDLコレステロール(悪玉コレステロール)値が高い
・肥満
・高血圧

多嚢胞性卵巣症候群である女性で、このようなリスク要因がある人は心臓疾患のリスクが高くなります。

閉経時、女性のテストステロン値が減少します。この減少は、性欲の減少と関係している可能性があります。更年期や閉経期の女性の性機能の改善に、テストステロン代替療法が役立つかもしれないと示している研究結果もあります。テストステロン代替療法は、子宮がんや乳がんの女性には勧められない方法です。心血管疾患または肝機能障害の確立を上げる可能性があります。このため、医師は治療法を勧める場合に十分注意を払います。

(翻訳者注:↑調べた限り、日本でテストステロン代替療法が行われているか、はっきりしません。ホルモン補充療法というものは使われている方法のようですが、テストステロンを代替療法として使っているのは米国の例のようです。自由診療などで輸入したテストステロンクリームを出している医師もいるようなのですが。とはいえ、やっていない、またはこれから始まる方法でないと言い切れないため、こちらの内容はよく確認してください。)

自分のホルモンの値が、高すぎたり低すぎたりしているかどうかについては、どうすればわかりますか?

医師は検診をし、健康状態と症状を評価し、ホルモン値を調べるために詳細な臨床検査が必要かどうか決定します。こうした臨床検査は、多嚢胞性卵巣症候群や無月経などの症状が、過剰な運動や拒食症などのせいでおきているのかどうか知るために重要なものです。検査結果でホルモン値が異常であるとわかれば、医師は効果的な治療法を行うことができます。

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